(4)戦略アナリシス

 

本章全体の解説

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この章の全体像は何かにチャレンジするときの一般的な考え方と一致します。まず、現状を把握して、理想の状態を定義し、そのギャップを埋める方法を考えるということです。ギャップにはリスクがあるという点も一般的ですね。

タスクをまとめると以下の通りです。

インプットとアウトプットの関係がやや複雑なのでよく整理しておくことをお勧めします。

 

1.現状を分析する

このタスクの目的はチェンジの必要性を理解することです。

分析の要素として以下の8つがあげられています。重要な点を補足すると、ここでのビジネスニーズとは、ステークホルダの視点ではなく、エンタープライズの視点です。

  1. ビジネスニーズ
  2. 組織構造と組織文化
  3. 能力とプロセス
  4. テクノロジーとインフラストラクチャ
  5. ポリシー
  6. ビジネスアーキテクチャ
  7. 内部資産
  8. 外部の影響要因

 

2.将来状態を定義する

このタスクの目的は、ビジネスニーズの達成に必要な条件を明確にすることです。

分析の要素として以下の11つがあげられています。

  1. ビジネスのゴールと目標:SMARTな目標であること
  2. ソリューション空間のスコープ:検討すべきソリューションの範囲
  3. 制約条件:予算、時間など
  4. 組織構造と組織文化
  5. 能力とプロセス
  6. テクノロジーとインフラストラクチャ
  7. ポリシー
  8. ビジネスアーキテクチャ
  9. 内部資産
  10. 前提条件の特定:たいてい決定的な前提条件が存在する。不確実な場合は早くテストすべき。
  11. 潜在価値:潜在価値=便益-コスト

 

3.リスクをアセスメントする

リスクはチェンジ戦略の選択(調整)に影響を及ぼすため、把握しておくことが重要です。リスクのすべてを知ることは不可能で不確かさは残りますが、その影響を算定することはできます。

リスクの洗い出しは難しいですが、過去の教訓や専門的判断が役に立ちます。制約条件や前提条件、依存関係を整理することはリスク分析の切り口となり得ますし、リスクそのものであることもあります。発生確率と影響度合いでマイナスの影響を算定します。ただし、組織のリスク許容度(リスク回避型/中立/選好)により、リアクションは異なります。このリスク許容度を加味し、対応方針を決定します。リスクを伴って進行する場合は、影響を受けるステークホルダを事前に特定しておきます。

 

テクニックの章にあるリスク分析の方法もここで併せて整理します。プロセスとしてはこちらの方がしっくりくると思います。

  1. リスクの特定:リスクの洗い出し。専門家、過去の経験、
  2. 分析:リスクレベルの理解、リスクレベルの見積もり
  3. 評価:価値の比較
  4. 対応:回避/転嫁/軽減/受容/増加

 

 

4.チェンジ戦略を策定する

いくつかのチェンジアプローチの中から1つを選定します。

チェンジ戦略の表現は、チェンジチームやステークホルダの考え方によって変わります(ビジネスケース/作業範囲記述書/戦略計画の一部)。

要素として以下の5つがあげられています。

1.ソリューションスコープ

ソリューションの境界を定義します。新しく提供される能力が何かをわかるように記述します。スコープを明確にするためにスコープ外の記述が入ることもあります。私はRFPをイメージするのが良いと思っておりますが、注意点はイニシアティブ(プロジェクト)を通して発展(変化)する可能性があることです(RFPは外部への提示を想定していますが、ここでは必ずしも外部への提示を想定していません)。

2.ギャップ分析

現状と将来のギャップを定義します。

3.エンタープライズの準備状況のアセスメント

チェンジを実施できる力があるか、維持できるかを評価します。

4.チェンジ戦略

(チェンジ戦略策定の要素にチェンジ戦略があるため混乱してしまいます。)

個人的に重要だと感じている点はチェンジ戦略は複数のチェンジを含むことがあるという点です。経験と照らし合わせると、以下のような例があります。

  • 1システムを変えるのがメインだとしても、変更しない他のシステムとのインタフェース改修が起きるケース
  • 1システムを変えることで、今までシステムが行っていた一部をRPA化したり、一部の運用を変えるケース

5.移行状態とリリース計画

移行・リリース計画を立てます。

 

以上が、戦略アナリシスのまとめです。