(2)引き出しとコラボレーション
本章全体の解説
他の章はフェーズを意識した方が理解できる側面が多いですが、本章はどのフェーズでも使用するもの、どの知識エリアでも横断して使用するものと捉えておいた方が良いです。計画的なこともあれば、計画的ではなく実行されることもあります。
私なりの言葉で表現すると、ビジネスアナリシス情報の扱い方を洗練しモデル化した知識エリアです。
1.引き出しを準備する
ニーズとステークホルダエンゲージメントアプローチをインプットにし、引き出しアクティビティ計画をアウトプットします。
ここでの重要な要素は引き出しのスコープを整理し、適切なテクニックを選択することです。スコープを理解していると、聞きたいことと違う話に発展していった場合に、話を戻すことができます。逆にスコープを事前に意識せずに情報を引き出そうとすると、話がずれた場合に非効率になるだけでなく、対応できない期待感をステークホルダ(情報提供者)に与えてしまう可能性があります。テクニックの例としては、インタビューで行うのか、ブレーンストーミングで行うのかなどの方法があります。
また、ステークホルダ(情報提供者)の協力を得るために、事前に補足資料のレビューを依頼しておくことも重要です。
2.引き出しを実行する
計画に基づいて引き出しを実行します(スコープから議論がずれた場合の対処、引き出し達成の判断を行います)。
引き出しは以下の3種類があります。
- 協働型:インタビューやワークショップなど
- 調査型:資料等から情報収集、
- 実験型:観察研究、概念実証(PoC)、プロトタイプ
また、テクニックとしてどのようなものがあるかは、一度整理しておくとよいと思います。
3.引き出しの結果を確認する
引き出しの実行結果を確認します。確認観点は主に二つです。
- 引き出しの結果を情報源と比較する
- 引き出しの結果をその他の引き出しの結果と比較する
ここではガイドラインとツールも重要です。
- 引き出しアクティビティ計画
- 既存のビジネスアナリシス情報
引き出しを実行するタスクと確認タスクを分けているのは、引き出しの後振り返ると問題を含んでいることがあるという経験則からであろうと推測します。
4.ビジネスアナリシス情報を伝達する
ビジネスアナリシス情報はステークホルダに伝わり、協力をえられるようになってこそ意味があります。そのため、情報、伝達時期、形式、表現を適切にしましょうという趣旨です。ビジネスアナリシス情報(多種多様)の伝達は、双方向かつ反復的です。ステークホルダが理解できない場合は、情報配信、伝達形式を複数用意することが必要になる場合もあります。
ビジネスアナリシスパッケージ(情報の表現方法の型)
わかりやすく伝えるためには、ビジネスアナリシスパッケージを利用することが有効です。BABOKでは、以下の3つを上げています。私はこの分類は公式度に基づいた分類であると捉えています。
- 公式:組織のテンプレート。会社で使うことが決められているもの。
- 非公式:(組織のルールではないが)イニシアティブ内で使用するもの。
- プレゼンテーション:わかりやすくするために作成した資料すべて
コミュニケーションのプラットフォーム
情報の伝え方も重要です。
- グループコラボレーション:一斉に関係者を集めて議論
- 個別コラボレーション:個別にヒアリング/説明
- Emailまたはその他非口頭的手段:関係者の成熟度が高く説明があまり必要ない場合に有効
5.ステークホルダーのコラボレーションをマネジメントする
イニシアティブの成功のためには、ステークホルダの協力を得られるように活動することが重要です。ステークホルダとの関係構築が弱いとチェンジへの抵抗や上質な情報提供がされないなどの悪影響をもたらします。ステークホルダエンゲージメントで重要なのは以下の3点です。
コミットメントを得る
なるべく早い段階でステークホルダからコミットメントを得ます。コミットメントへの期待と望ましい成果を明確にできれば、伝達方法は公式でも非公式でも構いません。
モニタリングする
他の作業を優先する、求められる品質を提供しない、承認の遅れ等は危険信号のため、継続的にモニタリングします。
コラボレーションする
情報、アイデアを(隠そうとせず)自由にやり取りすることを奨励すれば、ステークホルダはチェンジを支持するようになります。ステークホルダエンゲージメントがうまくいっている状態とは、自分の貢献が認められているとステークホルダが感じている状態です。
以上が、引き出しとコラボレーションのまとめです。